カーボン系量子材料の開発に向け、EmpaがCarboQuant研究所を設立

スイス連邦材料科学技術研究所(Empa)は、炭素系材料における量子効果を探求する新しい研究室を開設しました。Werner Siemens財団とスイス国立科学財団(SNSF)の支援を受けるCarboQuantプロジェクトは、量子コンピュータの部品を含む持続可能な量子技術の開発を目指しています。2025年1月30日に開設されたこの研究室は、原子レベルの精度で量子効果を標的操作できるナノグラフェンとグラフェンナノリボンという炭素ナノ構造に焦点を当てています。 研究室の中核となるのは、電子スピンなどの量子状態を制御するための高周波マイクロ波放射を備えた2台の最新型走査型トンネル顕微鏡(STM)です。「アップ」と「ダウン」の重ね合わせ状態をとることができるこれらのスピンは、量子コンピューティングの有望な基盤となっています。新しい量子磁性グループの責任者であるユジョン・ベイが率いる研究室の研究は、ナノグラフェンにおけるスピンのコヒーレント制御の達成を目指しており、これは機能的な量子技術への重要なステップとなります。また研究チームは、より複雑な量子相互作用を可能にするため、ナノグラフェン内のスピンの結合も目指しています。 CarboQuantプロジェクトの長期的な目標は、現在の研究室が依存している超高真空チャンバーと極低温冷却を超えて、室温で動作する炭素ベースの量子デバイスを開発することです。研究者たちは、炭素ベースの量子材料を研究するための材料プラットフォームを構築し、基礎的な理解と実用的な応用の両方を進展させることを目指しています。2032年まで続くこのプロジェクトは、量子材料研究の最前線にEmpaを位置づけています。 2025年3月6日