カーボンベースのスピン量子ビットにおいて1.3マイクロ秒のコヒーレンス時間を達成したとC12とエコール・ノルマル・スューペリウールが報告

C12とENS(エコール・ノルマル・スューペリウール)の研究者らが、カーボンベースの回路内での量子状態のコヒーレント制御を実証した研究成果をNature Communicationsに発表しました。この研究では、カーボンベースのスピン量子ビットのコヒーレンス時間が約1.3マイクロ秒であることが報告されています。この値は、カーボン量子回路で報告された最長のコヒーレンス時間であり、同様の環境条件下でのシリコンベースの量子ドットと比較して1桁高い値です。 実験では、強磁性接点を含む懸垂カーボンナノチューブ二重量子ドットを用い、これを回路量子電磁力学(cQED)セットアップの一部としてマイクロ波共振器に組み込んで、量子状態の操作を行いました。量子操作は共振器光子を介して実行されました。このシステムは約300 mKの温度で動作し、外部磁場がゼロの状態で量子状態のコヒーレント制御を可能にします。デコヒーレンスメカニズムの分析により、このシステムでのコヒーレンスを制限する主要因はコトンネリングであることが示唆されています。 この成果は、cQEDアーキテクチャにおけるスピン量子ビットのホスト材料としてのカーボンナノチューブの可能性を示しています。共振器に組み込まれた量子ドットで観察されたコヒーレンス時間は、ノイズの少ない拡張可能な量子アーキテクチャへの道を示唆しています。この研究は、懸垂カーボンナノチューブデバイスが、酸化物からの距離による電荷ノイズの低減や、将来的な酸化物フリー設計の可能性など、利点を提供する可能性があることを強調しています。同位体精製された¹²Cナノチューブや高インピーダンス共振器を用いた更なる進展により、高忠実度の量子ゲートとコヒーレンス時間の延長が可能になる可能性があります。 2025年7月2日