Oxford Ionicsは、トラップ型イオン量子コンピューティングプラットフォームの詳細な開発ロードマップを発表しました。Foundation(基盤)、Enterprise-grade(企業向け)、Value at scale(規模での価値)という3段階の戦略を概説し、現在の16~64量子ビットの展開から10,000以上の物理量子ビットへとシステムを拡張し、最終的には数百万の論理量子ビットの実現を目指します。このロードマップは量子ビット数だけでなく、10-4以下という業界最高レベルの物理エラー率の達成にも重点を置き、実世界のアプリケーションにおける実用的で高忠実度の量子計算の実現を目指しています。 Foundation段階では、Oxford Ionicsは99.99%の忠実度と完全結合を備えた16~64量子ビットのQPUを展開し、即時のエラー訂正なしで複雑なアルゴリズムの実行を可能にします。216の量子ボリューム(QV)を達成することを目標とし、初期段階の量子アルゴリズム、防衛、材料科学の研究をサポートします。これらのシステムは既に社内および顧客サイトで運用されています。 Enterprise-grade段階では、量子エラー訂正(QEC)により10-8という低エラー率を実現する256以上の量子ビットを備えたチップを導入します。これらのシステムは回路途中での測定やフィードフォワードなどの機能を追加し、16以上の論理量子ビットを持つQEC対応アーキテクチャを実現します。Oxford Ionicsは集積フォトニクスとスケーラブルなチップ設計により、製造の容易さとアップグレード可能性を重視しており、FoundationシステムはQPUの交換だけでEnterprise-gradeにアップグレード可能です。 Value at Scale段階では、高密度2Dチップアーキテクチャとそのワイヤリング統合スイッチング電子回路(WISE)多重化設計を活用して、チップあたり10,000以上の物理量子ビットへのスケーリングを目指します。このシステムは最小限のインフラ変更で700以上の論理量子ビットをサポートし、医薬品、金融、高度なシミュレーションなどの分野での商用量子優位性の実現を目指します。 Oxford Ionicsは既に英国国立量子コンピューティングセンター(NQCC)やドイツのCyberagenturなどの顧客とともに技術の商用化を進めており、このロードマップは100万量子ビット量子マシンを構築するという長期目標に向けて継続的な価値を提供するとしています。 2025年5月8日