日本のIBMクォンタムイノベーションセンターである慶應義塾大学は、三菱ケミカルと共同で量子レザバーコンピューティング(QRC)の研究を進めています。この共同研究では、IBMの量子プロセッサー上で機械学習タスクを実装することにより、実用規模のQRC手法の有用性を評価することを目指しています。この取り組みは、東京大学、アリゾナ大学、UNSWの研究者との2023年の実験を基盤としており、量子入力状態と線形回帰後処理を用いてソフトロボットの動きをモデル化しました。 従来のQRCアプローチでは各時間ステップで量子回路の実行を繰り返す必要がありましたが、研究チームは補助量子ビットを使用した反復測定技術を導入しました。この手法により、時系列データを1回の実行で抽出することが可能となり、実行時間が大幅に短縮され、予測精度も向上しました。最大120量子ビットのIBM量子デバイスで実験が行われ、従来のQRCスキームを上回る性能を示し、古典的シミュレーションの能力を超える可能性が示されました。 慶應義塾大学と三菱ケミカルのパートナーシップは、IBMクォンタムイノベーションセンターが産業界の研究チームの量子ユースケース探索をどのように支援しているかを示しています。慶應義塾大学は三菱ケミカル以外にも、より広範な企業パートナーと協力して量子アルゴリズムを共同開発し、社内の量子技術専門知識を構築しています。これらの協力により、産業界の研究者は学術専門家の指導のもと、先進的な量子ワークフローのプロトタイプを作成し、材料、金融、シミュレーションなどの実用分野における量子対応を加速することが可能となっています。 2025年4月30日