ダイヤモンド量子技術の拡張可能性へのロードマップ - Quantum Brillianceと共同研究者らがボトムアップ製造手法について概説

オーストラリアのダイヤモンド量子スタートアップQuantum Brillianceは、RMIT大学、ラトローブ大学、フラウンホーファーIAFと共同で、「ボトムアップによる室温ダイヤモンド量子コンピューティングおよびセンシング技術のスケーラブルな製造」と題した論文を発表しました。Mater. Quantum Technol.誌に掲載されたこの論文は、ダイヤモンド中の量子ビット(窒素空孔中心:NVセンター)を正確に製造するという課題に取り組み、ダイヤモンド量子技術を創造しスケールアップする方法を概説しています。 この論文では、NVセンターのボトムアップ製造に原子スケール製造(ASF)、特に水素脱不動態化リソグラフィー(HDL)技術の使用を提案しています。この多段階プロセスは、決定論的で、サブナノメートルの空間精度と結晶純度の保持を実現する方法として構想されています。これには、ダイヤモンド基板と表面の準備、走査型トンネル顕微鏡(STM)を使用した画像化と活性吸着サイトを作成するための標的化された水素脱離、選択的化学吸着のための窒素含有前駆体ガスへの表面露出、そしてNVセンターとしてダイヤモンド格子に窒素を組み込むための化学気相成長(CVD)による成長が含まれます。 この提案された方法は、室温量子コンピューティングとセンシングのための統合ダイヤモンド量子デバイスの実現を可能にすることを目的としています。量子コンピューティングにおいては、二量子ビットゲート操作のための密接に配置されたNVセンターのアレイ(例:5-10 nm間隔)の実現を目指しています。量子センシングにおいては、低ノイズ環境で同一のNVセンターの均一なアレイのスケーラブルな生産を可能にすることで、デバイスの感度向上を目指しています。Quantum BrillianceのChief Scientific OfficerであるMarcus Dohertyを含む著者らは、HDLベースのNVセンター製造にはエンジニアリングが必要であるものの、その実現可能性に根本的な障害はないと主張しています。 この研究は、より高い空間精度の達成、窒素ベースの分子吸着化学の最適化、成長時の窒素保持と窒素からNVへの変換収率の改善など、開発における主要な課題を特定しています。この展望は、原子スケールのNV製造分野における持続的なコミュニティの努力と分野横断的な協力を通じて、実験的および理論的進歩を継続することを奨励しています。 2025年7月24日